ネネコ・クローネルの冒険記
〜緑光輝の迷い子〜

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第一章(2)


「こんにちは」

「どわああっ!びっくりした……」
「何だお前!人間のガキか?」

彼等の大袈裟な反応に意表を突かれて少し戸惑ったが、
ネネコは物怖じせずに答えて見せる。

「わたしはネネコ。あなた達は誰?」

「ネネコだぁ?……ウン、害は無さそうだな……」
「オレ達は盗賊だ!泣く子も黙るフェンブリオ盗賊団とはオレ達の事だ!」

「ふうん……人の物を盗るのは、いけない事なんだよ」

あまりにも冷めた返答を受けて、ゴブリンは間抜けな顔で呆けた。
子分達に喋らせておいても話が進まないと踏んだのであろう、
二脚の機械に跨った、親分と呼ばれたオークが口を開いた。

「嬢ちゃん……ネネコと言ったか。こんな所で何をしてる?」
「わたしはこれから、遺跡探検に行くんだよ」
「遺跡?遺跡だあ?」

遺跡。遺跡と言えばお宝、財宝。
この小娘を絞れば、何か有力な情報が得られるかも知れない。
親分が単純な思考を巡らせている間に、少女と子分の間で話は進んでいた。

「盗賊団のあなた達は何をしてるの?」

「道に迷ってるんだ!」
「腹も減った……」
「オッサンが寝てる間に、尻の下でコンパスを破壊したからこんな事に……」

適当な事ばかり言う子分達の頭に拳骨を食らわせると、
改めて低い声色を作ったオークの親分が凄んでみせる。

「……そうじゃねえ。
おい嬢ちゃん、遺跡探索と言ったな。オルデマスに遺跡があるのか?」
「噂を聞いて来たんだ」
「どっちの方角だ?」
「あっちだよ。ここから北西」

噂止まりか……と眉を顰めたが、こうしてただ道に迷っているのも面白くない。

「親分、そんなのどうでもいいじゃないですか」
「腹が減ったって言ってるのが解らないかな、この親父は」

「馬鹿野郎!
……いいか、このガキからお宝の情報を暴き出し、
身包みごと食料を奪い、ついでに地図やらコンパスやらも頂けば良いのよ」

「うわ、悪どい!」
「だけどまあ、理にかなってますね。都合良過ぎる気がするけど」

彼等の思惑が聞こえているのかいないのか、
ネネコはひとり呆けているゴブリンを捕まえて聞いてみた。

「ねえねえ、この機械は何なの?」
「ああ、これ?落ちてたのを拾って、オレ達が改造して使ってるんだ」
「誰かの物じゃないの?人の物を盗ったら駄目だって言ったでしょう」

「いやだから、放棄されてたんだって!リュシードの下流に沈んでた」
「そっか……わたしが思うに、軍人さんの特殊アーマーじゃないかなあ」

「ふふふ……オレ達はこのリーサル・ウェポンをオスト・リッチと名付けた!」

ひそひそと作戦を練っていた親分、それから二匹の子分も
こちらの話に割り込んで入ってきた。
自信に満ち溢れた表情で、親分は廃棄弁を吹かして再度ネネコに迫ってくる。

「……おうよ!
さあ嬢ちゃん、このオスト・リッチのパワーで怪我をしたくなければ、
身包み全部置いていきな!大人しく渡せば、命だけは見逃してやる……」

「そうだ親分、やっちまえ!」
「生意気な人間のガキなんか、のしちまえ!」

「あのな……お前等も行くんだよ!こんな時まで役立たずか!」
「何の為に、アンタにその機械を譲ってると思ってるんですか」
「いざという時は、親分に先陣切って戦って貰う為でしょうが!」

懲りもせずに怒鳴り合いを始める盗賊団達の姿にあっけに取られるが、
彼等の目的は解った。ネネコも黙って、持ち物を差し出す気は無い。

「あなた達に渡す物なんて、無いよ」

腰を落として構えるネネコの、凄みのある表情を察すると
親分は眉間に深い皺を寄せて声を荒げた。

「……おい、そりゃ何のつもりだ?
本気で俺達と戦り合う気か!怪我して泣いても知らねえからな!」

「わたしは引かないからね……いつでもどうぞ!
盗賊なんて真似、止めさせてあげるから!」

子供のくせに、舐めた口を叩きやがって!
頭に血が昇った親分は、二本のマニピュレート・アームを振り回して、
必要以上に威嚇しながら、ネネコの寸前に立ち塞がる。

「もう駄目だ、見逃してはやらない!お家に帰れない身体にしてやる!」

「やれー!やっちまえ親分ー!」
「新兵器を積んどきました!赤いボタンを押してください、親分!」

「ほう、これか?……ポチ」

躊躇いも無くボタンを押す親分だが、剥き出しになった座椅子が
激しく振動し始めたかと思うと、周囲に煙が噴出してくる。
明らかに様子がおかしい。

「な……なんだ!?どわあああっ!」

間の抜けた爆発音が響くと、
親分は座椅子と共に空の彼方に飛んでいってしまった。
後には口を大きく開けて事態を見守るネネコと子分達、
そしてもぬけの殻と化したオスト・リッチの残骸が残った。

「あああああああああ……」

座椅子から噴出す煙が軌跡を描きながら、
親分の悲痛な叫びを共に連れて行く。
事態を飲み込んだ子分達は、残骸を物色しながら言い訳を重ねた。

「お、親分が星になった……」
「あれ脱出装置じゃんか!赤いボタンじゃなくて、青いボタンじゃねえの?」
「間違ったかな?間違ってるよな絶対」

「もう、なんなのよ……」

何処までも人騒がせな一団に、見守っていただけのネネコも疲れてしまった。


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