ネネコ・クローネルの冒険記
〜緑光輝の迷い子〜

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第一章(3)


「それで、あなた達はどうするの?」

一息つくと、ネネコは彼等に対して当然の問いを投げた。
ネネコとしてはもう、争い合う必要も無いと感じているのだが。

「え?あっ……ひいい!」
「すみません、ごめんなさい!もうしません!」
「い……命ばかりはお助けを……」

親分もいない。オスト・リッチも動かせない。
後ろ盾を無くしてしまったゴブリン達は、途端に弱気になってしまった。
お互いの身を寄せて縮こまり、震える姿がとても滑稽に映った。

「あはっ……あはははは!」

一瞬目を丸くしたネネコが突然、大口を開けて笑うので子分達も戸惑った。

「あはは……あはっ、あはっ……ごめんね、笑ったりして」

「え……あの……」
「もしかして、怒ってないの?」

「どうして?わたしは何も、怒ってないよ」

子分達に寄ると、再度彼等が震えるのでネネコは頭を撫でてあげた。
様子を伺う限り、たしかにこの少女は怒りを抱えている事は無さそうだ。
子分達の緊張も解れてきた。

「そういえばあなた達、お腹が空いたって言ってたよね」

「う、うん……もう三日間、何も食べてない」
「思い出したら、腹減ってきた……」

「リンゴとか干物だったら、持ってるよ。食べる?」

「え!?くれるの?」
「オイラは魚がいいな……焼き魚が食べたい……」
「おいお前!わがまま言うんじゃない!怒らせたらどうすんだ……」

「魚?魚だったら、川で釣ればいいんじゃないかな」
「だけどオレ達、コンパスも地図も無いから……川が何処にあるのか」
「耳を澄ませば、水が流れる音が聞こえるでしょう?……ほら」

ネネコの言う通りに、彼等も注意深く周囲の音に気を配ってみるが……
水の流れる音など聞こえない。
騙された気分になったゴブリンの一匹がいきり立った。

「何も聞こえないじゃねえか!からかいやがって!」
「バ……バカ!だから、いちいち抵抗するなって!」

「そんな事無い……あっちだよ。あっちに行けば、川に辿り着くよ」

ネネコは確信を持って断言するのだが、
果たして本当に、水の流れる音など聞こえてはこない。
不安と苛立ちを同時に抱えて、ゴブリンは互いの顔を見合わせる。

「ええ……?」
「本当かよ……何も聞こえないけど」

「だったら、わたしが一緒に行ってあげるよ」
「え?いいの!?ありがとう!」
「……待て!騙されるな!」

疑り深いゴブリンの一匹が再度、話を妨げてしまう。

「もう……何だよ、さっきから」
「いいか、よく考えてみろ……どうも話が上手く行き過ぎてないか?」
「道案内して貰えて、腹一杯になるんだから、良い事づくめじゃん」

「だからだよ!きっと、行く先にはコイツの仲間が居て……ボコボコに……」

「そんな事しないよ。わたしは一人だよ」

「嘘つけ!信じるもんか!」
「じゃあお前、ここに残れ」

「え?」

「そうそう、オレ達はネネコについて行くから、お前だけ留守番な」
「多分帰ってこないがな」
「ええ?そんな……ひとりぼっちは嫌だぜー!」

「みんなで一緒に行こうよ、ね?」
「う、うう……」

親切を無碍にされて、一方的に疑われても気遣ってくれるネネコを前に、
彼もようやく観念したようだ。
へたり込んでいた様子も何処かへ消え、彼等は勇んで歩き始めた。

「待って、待って!この機械はどうするの?」
「どうするったって、もう動かないし……元々オレ達の物じゃないし」
「そんな事言って、ここに捨てていくの?」

「仕方無いじゃんか!こんな重いもの運べないしさ」
「盗んだり捨てたり……駄目だよ」

頑ななネネコの態度に、盗賊団の三匹も困り果ててしまった。
ここはひとつ、適当に誤魔化すのがいいだろう。

「わかった!それじゃあ、お腹一杯になって事が済んだら、持ち帰るからさ」
「それなら文句無いだろ?」

「本当?約束出来る?」
「本当、本当、オレ達はウソつかない!ゴブリンはウソつかない!」
「……っていう言葉がすでに、ウソなんだけどさあ……」

余計な事を言うゴブリンは、仲間に脇を小突かれて蹲る。
二匹が影に隠しながら、輝く瞳でネネコを見つめた。

「……もう、いいよ。約束だよ。じゃあ、魚を捕まえに行こうか」
「やったー!」
「女神だ!ネネコは貧窮に瀕したオレ達に舞い降りた、女神だ!」
「ま、待ってよお……」

また本来のコースを外れていく事になるが、
ネネコは大して悩む様子も無く、盗賊団の三匹を連れて川へと向かった。
相変わらず、彼等は賑やかだ。
周囲が騒々しくなる中、その中心でネネコは微笑んだ。


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