ネネコ・クローネルの冒険記
〜緑光輝の迷い子〜

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第一章(12)


(……ネコ、ネネコ!)

ネネコは目覚めつつある意識の中で、聞き覚えのある声を聞いた。

「う……んん……」

(おいネネコ、しっかりしろ!)
(畜生、あいつ、ネネコに何したんだ!)

「ん……ボジョ、ニッチ……?」

そうだ。
ボジョ、ニッチ、コポル。友達の声だ。
心配そうに不安な声を挙げる彼等を安心させるには、起きなければ。

「うう、ん……みんな……」

「あっ!目を覚ましたぞ!」
「ネネコ、良かった!生きてたんだな!」
「ゴーストの奴が、魂抜き取って持っていっちゃったのかと……」

四肢にも感覚が戻ってきた。動くようだ。
彼等の声を現実の物として捉えると、周囲を見回して状況を確かめた。
ネネコは広間の中心で横たわっていた。

「ボジョ、ニッチ、コポル……何が、どうなったの?」

焦点も定まり、彼等の顔に向きながらネネコが尋ねる。
その様子に、盗賊団の彼等も安心したようだ。
それぞれが口火を切り、一斉に言葉を重ねた。

「ゴラムもゴーストも姿を消したと思ったら、お前倒れちゃったんだよ」
「揺すっても話しかけても起きないし……死んじゃったのかと思った」
「もう、怖い事の連続なんだから、あんまり怖がらせるなよ!」

ボジョ達の言葉を頭の中で整理して、ようやく現状が掴めてきた。
幻想の中で見た青い空間は、やはりネネコだけが連れて行かれたようだ。
ボジョもニッチもコポルも、ネネコが見た世界は感じ取れなかったのだ。

「そっか……私、気を失ってたんだ……」

幻の中で、自身の身体が消え失せていく感覚を味わったばかりだが、
二、三度拳を握ったり開いたりして見ると、これが現実なのだと実感できる。
現実と幻の中で起こった事、すべてを整理すると、ネネコは声を挙げた。

「……そうだ!ゴラム達はどうなったの……ゴーストは?」

「ゴラムは塵になったまま消えちゃたし、ゴーストだって……」
「ネネコが倒れるのと一緒に、白く輝いたかと思うと、突然消滅したんだ」

「そっか、そうだったんだ……ん?」

何処か夢心地のままの様子のネネコを見て、彼等は
再度不安に苛まれるが、ネネコの視線を追うと天井から
緑色の発光球体が舞い降りるのを確認して、それぞれが驚きの声を挙げた。

「なんだ……あの、丸っこいの……」
「こっちに降りてくるぞ!」

緑色の発光体は、ネネコの胸元まで降りてくるとその動きを止めた。
しかし相変わらず、その球体は輝き続けている。

「ネ、ネネコに触って欲しい、って言ってるのかな?」
「止めろよ!これ以上おかしな事になったら、大変だ」

「だけど……」

ボジョ達は不可思議な光景に口々に声を挙げるが、
ネネコの身を案じてか、これ以上のトラブルは懲り懲り、と怯えて見せる。
ただ、ネネコ本人は違うようだ。

「この光も、蛍火の光……なんだか懐かしい、優しい感じ……」

ネネコの瞳に発光体の緑が移り込み、同様に輝いてみせる。
心ごと吸い込まれてしまったのだろうか、手を添えようと動く様を
危険だと察したボジョとコポルが、動揺しながらも制止した。

「駄目だ、ネネコ!」
「そいつに触れたら、また……」

だが、もはや手遅れであったのだろうか。
傍で騒ぐ彼等の言葉など届かないかの様に、ネネコは発光体を抱えた。

『さあ、はやく会っておあげ。彼はずっと……待っていた』

黒色のカラスの言葉が、ネネコの脳裏に蘇る。
もはや、現実であろうが幻であろうが関係ない。
溢れる輝きの中で自身の心に染み渡ってくる光を感じると少女は目を閉じた。

(あなたは誰なの?)

(ずっと待っていたのは、あなた?)

「わたしも……あなたに会いたい……え、ゆ……」

激しさと穏やかさの中で、聞き取れない囁きを漏らすネネコの姿が
緑色に輝く光に飲み込まれようとしていた。
ボジョもニッチもコポルも、目を見開いてはいられない。

『いま、其処に行くよ……』

放出される光がボジョ達の心に感応すると、彼女の言葉を残して
一層輝きを増した閃光の中へと、ネネコを導いていった。
甲高いノイズと耳を切り裂く咆哮が消えると、すでにネネコの姿は無かった。

やがて広間に、静寂が訪れる。

「ネ、ネネコ……?」
「今度は身体ごと消えちまったのか?」

「もう、一体何なんだよー!」

神秘的な光景から取り残され、現実に飲み込まれた彼等は
ただ悲鳴を挙げ、ネネコの名前を呼ぶ事しか術が残されていなかった。


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