ネネコ・クローネルの冒険記
〜緑光輝の迷い子〜
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第一章(5)
熱帯雨林という環境下では、水辺川辺ともなると
水分を求めた動物達が、入れ替わりに顔を出すようになる。
いまも木陰から、肘から先までの大きさ程もあるトカゲが飛び出してきた。
「なあ……あいつ食えるかな」
「お前、食えよ」
「やめとく……」
「あー、全然釣れねー」
長い時間をかけて辿り着き、ようやく念願の食料にありつけると思いきや
彼等は中々、獲物である魚を釣り上げられずにいた。
辛抱が足りず、事あるごとに騒ぎ出してしまうのだから、当たり前なのだが。
「さっさと釣れよ、お前等」
「オレは釣ったぞ」
「エサ獲って逃げられたくせに……」
「なんだと!かかりもしないお前等よりマシだ!」
「食えなきゃ釣れないのと同じだ、バーカ!」
「ああもう、また逃げるじゃんか……あっ」
何度同じ事を繰り返しても懲りないのか、これでは日が暮れてしまうだろう。
仲間の一匹が頭を抱えているとしばらく姿を消していたネネコが帰ってきた。
「みんな、ただいま!」
「あ……ネネコが帰ってきた」
「お前、何処行ってたんだよ」
「どう、釣れた?」
「釣れるわけないじゃんか!こいつらみんな役立たずだ!」
「人の事言えるか!足引っ張ってんのはそっちじゃんか!」
「まったくもう……そんな調子だと思った。はい、釣ってきたよ」
ネネコはこうした事態になる事を始めから予測していたようだ。
抱えた丸い籠を差し出すと、集まったゴブリン達の瞳が輝いた。
「うわ、スゲー!一、二、三……七匹も釣り上げてるぞ!」
「なんだよ、もう……穴場を知ってるなら、先に教えてくれよ」
「ここには始めて来たんだよ。もう少し上流で釣ったの」
「あれ?ネネコ、こんな籠持ってたっけ?」
「カカキの枯枝を削ったものを編んで作ったんだよ。
魚がかかるのを、ただじっと待ってても暇でしょう?」
「ス、スゲー……」
彼等が握っている釣竿を現地調達してくれたのも、ネネコだ。
なんと手際が良いのだろう……改めて感心したが、仲間はそれどころではない。
「ネネコ、焼いて焼いて!」
「うん、準備するから待っててね」
「何から何まで、お手数かけてスミマセン」
結局、彼等は最初から最後までネネコに頼り切りとなった。
火起しから魚の下準備まで、慣れた手つきで済ませてしまう。
自然過ぎて気がつき難いが、一人旅をしているのが嘘では無いと、
納得させられる一面ではあった。
「だけどあなた達、こういう事覚えないから三日も何も食べられないんだよ」
「親分に任せっきりだからなあ」
「覚えようっていう気力が無いんだよな」
「駄目じゃない」
彼等の呆けた表情を見て、ネネコはくすくすと笑った。
こうしている間にも魚は程好い加減に焼き上がった。
野宿の最中は、食事は最低限に留めているネネコではあるが、
彼等に二本ずつ譲るとして、自身も口にする事にした。
「ああ旨い、旨いよ」
「ありがとなネネコ、本当助かった!生き返るよ」
「うん。残さずに食べてね」
「そういえば、親分はどうしたかなあ……」
「探しに行かなくて良いの?」
「見つけたら見つけたで、また拳骨食らいそうだし」
「時の流れに身を任せましょうかね」
「成るように成るわな。ああ旨い」
あまりにも仲間意識が低いので呆れてしまったが、
彼等なら普段からこうした感じなのかも、と想像するとしっくりきたので
ネネコはあまり気にかけないことにした。
「親分を探しに行きたい」と言い出したら、手伝うつもりではあったのだが。
「あれ?オレ達はこれで良いんだけど、ネネコは何しに来たんだっけ」
「わたし、遺跡探検に来たんだよ」
「あ、そうだ!遺跡と言えばお宝、財宝の山だ!」
「みんなも遺跡を探していたの?」
「違う違う。そんなの知らなかった」
「ネネコがさっき、親分の前で言ってたろ?それでさ」
「遺跡に行くなら、オレ達も手伝ってやるよ」
「足引っ張りそうだけどな」
「現に今、引っ張ってる最中だしな」
「あなた達が行きたいなら、わたしは止めないよ。一緒に行く?」
「行く行く、暇だしな!」
「そしてお宝ゲットだ!美味しい所は頂きだ!」
余計な事ばかり言うニッチがボジョとコポルに殴られると、
ネネコが続けて注意を促した。
「だけど、お宝を盗むのは駄目だよ。見るだけだからね」
「えーと……はい、はい」
特に言い訳や誤魔化しも思いつかなかったので、適当に流す事にする。
彼等の様子から本心を察するのは簡単ではあったが、
いよいよ遺跡をこの目で見る事が出来る、と思うとネネコは胸が躍った。
「それじゃあ、お昼を食べ終えたら出発しようか」
「そうだそうだ!まずは腹一杯にしとかないとな」
「腹が減っては戦は出来ぬ、ってな」
「据え膳食わぬは男の恥、ってな」
「なあ……お前等、ちゃんと意味解って言ってるか?」
「解んね」
「オレも」
愉快な昼食を楽しむのも久し振りだ。
おかしな事から友達になった彼等とも、出会えて良かったかも……と
ネネコは何処か安堵している事を、自覚して目を伏せた。