ネネコ・クローネルの冒険記
〜緑光輝の迷い子〜
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第二章(7)
ユノン大尉は、エルマーの身体を撫でた自身の掌を
閉じたり開いたりしてみるが、とくに違和感は無かった。
掌を返し、甲を睨みながら言葉を探していると、部下達が近づいて来る。
「ユノン大尉、いいんですか?」
「何がだ、伍長」
「だから、その……機械人の捕獲は、任務じゃなかったんですか」
開口一番、レノット伍長は誰もが聞きたい問いを口にする。
だが大尉は臆する事も無く、涼しい表情で言葉を流す様子だ。
「機械人?伍長、君はいま機械人を見たのか?」
「え?あ……さっきの白い奴は、機械人なんじゃ……」
「俺は機械人を見た事が無いのでね。先のが機械人とは判断出来なかったな」
伍長は言葉に詰まってしまう。
同時に、大尉の言葉と姿勢に動揺を隠し切れなかった。
ダグ少尉、そしてエッジ少尉は納得出来ないようだが、理解は示した。
「……そうかい、そういう事か」
「そういう事だ」
「第一小隊の今期派遣任務はオルデマスの遺跡調査だ。再開するぞ」
「了解。さあ、行けよレノット」
「は、はい……解りました」
釈然としない感覚を抱えたままではあるが、
作業を命じられれば疑問も持たずに従う他無いだろう。
主体性を持たない、レノット伍長は髪を掻き上げながら持ち場に戻る。
「君も不満かね、ダグ少尉」
「いえ。不満はありません。ですが、疑問は残ります」
「あれが機械人じゃないとしても、何かしら聞き出せたはずだろう?
参考人としては十分だ。何故あのまま行かせたんだ?」
「話はしたさ」
「で?何か解ったか」
「いや。有力かつ信憑性のある話は何も」
「……」
「相手は子供だからな。夢物語を口にするだけだった」
「大尉、私も作業に戻ります」
「ああ。頼む」
傍目にはダグ少尉はあっさりと引き下がった様に見えるが、
やはり理解は出来ても納得は出来ない、という様子が伺えた。
それでも本人の言葉通り、不満や疑念を抱えているわけでは無い。
「俺達も始めるぞ」
「まあ、待てよ」
「どうした。まだ何かあるのか」
「……あまり派手な真似はするなよ」
「何の話だ?」
「はぐらかす必要も無いだろう。らしくないって言ってるのさ。
自身の範疇から逸脱した行動を取る時は、相応のリスクがあるってもんだ」
エッジ少尉は常に、任務内容に忠実なユノン大尉の姿を見てきた。
だからこそあからさまに、かつ当てつけとも取れる行動を取る彼に
どうしても違和感を感じずにはいられないのだ。
「……覚えておくよ」
「何も話す気は無いんだな?」
「……」
「薄情な奴」
やはり追求は諦めるしかない様だ。
エッジ少尉は腕を大きく振って頭を抱えると、大袈裟に笑って見せた。
「あの子は?名前くらい聞いたんだろう」
「ネネコだ。ネネコ・クローネルと言った」
「どういう一行だったんかね?ゴブリンと、謎の巨人と」
「本人によると、遺跡探検の途中で彼等と合流したそうだ」
本題から外れると、ユノン大尉の口は緩くなったようだ。
様子を探るエッジ少尉は、やはり機械人に関しては
部下にすら話せない秘密、もしくは事情があるのだと認識する。
「……このまま終わりそうには無いな」
「もう一度会う事になると?」
「そりゃあそうだろうが。何せ、機械人『らしき』物を連れていたからな」
少尉はわざと「らしき」と強調し、大尉を挑発して見せる。
ユノン大尉は苦笑すると、モルドフのハッチに手を掛けて言葉を濁した。
「さて、始めますかね。何せ、遺跡調査は本来の任務ですからなあ」
「フフ……」
オズ・パッセでは、指示通りにネネコ達の姿を撮影したマヤ准尉が
映し出される映像を確認し、そのまま保存の手順を踏んでいた。
そこには、カメラが光る瞬間を見逃さなかったのだろう、
こちらに向かって視線を向けるネネコ・クローネルの姿が映っていた。
「女の子……こんな所で、何をしていたのかしら?」
外にいる同僚達が、再度作業に取り掛かり始めたのだろう。
画像や通信が送られてくる回数が徐々に、順調に増えてきた。
ネネコの顔を横目で見ると、窓を閉じた准尉は頬杖を付いて溜息を零した。